入会の動機
飛鳥井 豊
私が東洋はり医学会を知ったのは、中田光亮先生を通じてでした。
当時、坐骨神経痛で苦しんでいた私は知人の紹介で、中田先生の元を訪れ治療をして頂きました。
そこで初めて経絡治療を受けたのです。
その当時、鍼灸学校の3年生だった私は学校でいろいろな治療法を学んでいましたが、経絡治療は名前は聞いたことがあっても、具体的にはわかっていませんでしたし、どこへ行けば受けられるのかもわかりませんでした。
そんな私に中田先生はいろいろな話をして下さり、東洋はり医学会の事も教えて下さいました。
学校の授業では脈診と69難の組み合わせは習っても、それ以上の発展はありませんでしたが、中田先生の治療ではこまかく脈を診ていきました。
これは、鍼灸が効果があったかどうかを確認する良い方法だと思いました。
鍼灸師になった今思うのですが、効果があったかどうかは患者さんの主観によるところが大きいと思うのです。
例えば腰痛の方がいて、治療後楽になったと言われれば効果があったとしますが、鍼灸師自身はよくわからないと思うのです。
ですが脈診をして変わっていれば、鍼灸師もそれを感じることができます。
それが指針になりますし、自信にもなると思うのです。
また、先生の治療では奇経を使われていました。坐骨神経痛という事で申脈と後渓の組み合わせでした。
これも学校では試験問題として、何と何の組み合わせが正しいかという程度にしか教わりませんでしたが、実際坐骨神経痛に効果がありましたし、こういう事をもっと知りたいと強く思いました。
他にも中田先生にはいろいろな事を教わりましたが、一番強く心に響いたのは
鍼灸には限界はないという事でした。
例えばWHOでは鍼灸の効果があるのはこれと限定していますし、医療保険の適用になっているのはもっと少なくなります。
しかし、全身をみる、その人の自然治癒力を高めるという考え方なら、限界はないと思うのです。
私は今、訪問鍼灸の仕事をしています。9割の患者さんが高齢者です。
高齢になれば持っている病は一つではないですし、飲んでいる薬もたくさんあります。
よく話を聞くのは、病院に行っても歳のせいだと言われ痛み止めと湿布をもらってくるだけでちっとも良くならないという声です。
西洋医学では腰なら腰だけを診て、全体を診ようとしない気がします。
ですが、高齢者なら悪いところは一つでは無いはずなのです。
確かに鍼灸でも局所しか治療しない先生もいます。
しかし経絡治療ならば違ったアプローチができると思うのです。
ここ数回支部会に参加させていただいて、その気持ちを強くしました。
鍼灸は奥が深いものだと思います。
鍼灸師になった以上、鍼やお灸をすることができます。ですが、ここのツボが効くからここに刺すという治療ではだめだと思うのです。
その為には自分の中に確固たるものが必要です。それがあってこそ患者さんに向き合える気がします。
東洋はり医学会には私の探す答えがあると思っています。